FP1級実技面接レポートとして作成した次のページ。
ここで私は農地法3条で話を進めました。
しかし実際には農地法4条が正しい答えとなります。
ではなぜ移転と転用なのに農地法5条の対象にならないのか。
農地法の条文を見ながら解説していきます。
なお、このページはe-Gov法令検索のページをもとに作成しています。
問題は以下をご覧ください。
fp01_j_1001part2一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャルプランニング技能検定1級実技試験 2022年10月1日 Part2
利用許諾番号:2210K00004
農地法のおさらい
FPの試験に出てくる農地法は3条から5条まであります。
以下、それぞれのざっくりとした説明です。
農地法第3条
農地を農地のまま他者に移転する場合は農業委員会の許可が必要。
農地法第4条
農地を農地以外の目的に転用する場合は都道府県知事の許可が必要。
ただし農地が市街化区域内にある場合は農業委員会の届け出でOK。
農地法第5条
農地を農地以外の目的に転用するために他者に移転する場合は都道府県知事の許可が必要。
ただし農地が市街化区域内にある場合は農業委員会の届け出でOK。
設例の前提
農地法の条文を見る前に今回の設例でキーとなる部分をまとめます。
本文4行目~6行目・・・農業を廃業し、Aさんの家は農家資格を喪失している。
本文11行目~12行目・・・乙土地では野菜の栽培をしているが自家用でありAさんやCさんは農業従事者ではない。
本文24行目~26行目・・・地目が畑となっているため農地法3条の許可が必要な共有物の分割は難しい。
これらを前提として農地法を見ていきます。
農地法の本文と要約
以下、本設例に該当する農地法の本文とその要約です。
なお、要約はざっくりとした感じですのでご了承ください。
農地法第3条第一項
(農地又は採草放牧地の権利移動の制限)
第三条 農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合及び第五条第一項本文に規定する場合は、この限りでない。
農地法 | e-Gov法令検索
農地法第3条第一項の要約
第3条 農地や採草放牧地(以下「農地等」と表現します。)の所有権を移転したり、その農地等の使用や収益を目的とする権利を移転する場合は、農業委員会の許可が必要。
ただし、農地法第3条の一定の規定に該当する場合や、農地法第5条第一項本文の規定に該当する場合は農業委員会の許可を取らなくてもよい。
この第3条の本文の規定により農地等の所有権の移転には農業委員会の許可が必要であることがわかります。
農地法第3条第二項
2 前項の許可は、次の各号のいずれかに該当する場合には、することができない。
~中略~
一 所有権、地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を取得しようとする者又はその世帯員等の耕作又は養畜の事業に必要な機械の所有の状況、農作業に従事する者の数等からみて、これらの者がその取得後において耕作又は養畜の事業に供すべき農地及び採草放牧地の全てを効率的に利用して耕作又は養畜の事業を行うと認められない場合
~中略~
四 第一号に掲げる権利を取得しようとする者(農地所有適格法人を除く。)又はその世帯員等がその取得後において行う耕作又は養畜の事業に必要な農作業に常時従事すると認められない場合
農地法 | e-Gov法令検索
農地法第3条第二項の要約
2 次の各規定に該当する場合は、農地法第3条第一項で規定されている農業委員会の許可を得ることはできない。
一 所有権等の移転をした後、新所有者が対象の農地をすべて活用できると認められない場合
四 所有権等を取得しようとするものが農作業に常に従事すると認められない場合
以上より、本設例では農家資格を喪失していること、農業従事者ではないことから農地法第3条で定められる農業委員会への届け出はできないことになります。
農地法第5条第一項
(農地又は採草放牧地の転用のための権利移動の制限)
第五条 農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のもの(農地を除く。次項及び第四項において同じ。)にするため、これらの土地について第三条第一項本文に掲げる権利を設定し、又は移転する場合には、当事者が都道府県知事等の許可を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
農地法 | e-Gov法令検索
農地法第5条第一項の要約
農地等を農地等以外のものにするために、これらの土地について農地法第3条第一項本文に記載されている権利(所有権等)を設定や、権利の移転を行う場合は都道府県知事の許可が必要。
以上より、農地法第5条は農地法第3条をクリアできることが前提で記載されています。
なので本設例では相談者が農業従事者ではないため農地法第3条の条件に合致せず、自動的に農地法第5条が対象外となってしまいます。
だから第4条
以上のことから農地法第3条はそもそも適用できず、農地法第3条が前提となっている第5条も適用できません。
ちなみに農地法第4条の本文は以下の通りです。
(農地の転用の制限)
第四条 農地を農地以外のものにする者は、都道府県知事(農地又は採草放牧地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に関する施策の実施状況を考慮して農林水産大臣が指定する市町村(以下「指定市町村」という。)の区域内にあつては、指定市町村の長。以下「都道府県知事等」という。)の許可を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
農地法 | e-Gov法令検索
これは見たままの通りで農地の転用は都道府県知事の許可が必要となっています。
さいごに
今回はFP1級きんざい実技面接2022年10月1日Part2に出題された農地法を中心に解説しました。
面接中はずっと焦ってましたし訳のわからない特例も出てきましたが、改めて条文から見ると納得できる話の展開です。
農地法自体は学科にも出るものの条文から考えるものは出題されていませんでした。
実技面接を完璧にするのであれば法令までチェックするのが大切かもしれません。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
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